chapter2LastGuardianchapter2「Development」 レドナの咆哮とともに風を切る漆黒の刃。 その剣を見た、黒いコートの男は驚きの声を上げた。 ???「なっ!!グリュンヒルだとぉっ!?」 レドナ「はあぁぁぁっ!!!」 刺突を槍の刃で受け止める。 しかし、槍の軌道はすぐにそれ、黒いコートの男は直撃を受ける。 数メートル弾き飛ばされ、地面が砂埃を舞い上げた。 ???「くっ、これがラストガーディアンの力か・・・・」 傷を受けた左手を押さえて、黒いコートの男が立ち上がる。 だが、レドナの攻撃はまだ終っていない。 倒れていた1秒の間に、レドナは高く飛翔した。 そして、漆黒の刃を真下に向け、降下してくる姿が見えた。 レドナ「くらえぇぇぇっ!!!」 ???「!?」 ガツンと鈍い音が再び戦闘区域に響く。 漆黒の刃は、黒いコートの男の胴体と左手を切断した。 血が飛び散り、刃はそのまま地面に突き刺さる。 痛みにコートの内で顔を歪ませる男。 それとは裏腹に、やったという感じのレドナ。 まだレドナの攻撃は続く。 そのまま両手で握った刃を大きく振り上げる。 黒と赤の閃光を残し、黒いコートの男の顔面を斬る。 フードは取れなかったが、確実に眉間辺りに傷を入れた。 証拠に血がたれている。 ???「はぅっ・・・・ぐぅぅっ!!!」 黒いコートの男は後ろに飛ぶ。 その際、右手に持ち替えていた槍が光となり弾けた。 壊れたわけではなく、わかりやすい言葉でいうと異空間への収納である。 地面に着地し、空いた右手で黒いコートの男は黒い魔法陣を出現させた。 それはブラックホールのようになり、その中に入っていった。 レドナ「っ!待てぇっ!!!」 急いでレドナもそのホールに駆け寄るが、すぐに消滅してしまった。 転移魔法であることは間違いなかった。 要するに、逃げられたという表現がマッチする。 次の瞬間、序所に足元に戦闘区域をあらわしていた魔法陣が再び浮き上がる。 術使用者の反応が内部から消えたため、自動的に崩壊しているのだ。 急いでレドナは元自分がいた場所に戻った。 結界が崩壊し始めて1分。 さっきの空間はもとの世界とリンクし、時は普通に過ぎ始めた。 無論、中の人も全てだ 派手な魔法戦があったにもかかわらず、それを知っているのはレドナだけだった。 全校集会も終り、生徒は重い腰を上げて、教室へと戻っていった。 レドナはそれどころではなかった。 仲間を4人失った悲しみが、どっとこみ上げてきた。 特に、間近で見たエンネの死。 復讐心の塊が心の奥深くに居座った気がした。 あえて、レドナは表には出さなかった。 変に感情を露にしては自分がガーディアンであることを話さなくてはならない。 実際、ガーディアンであることを知っている人間はごく少数。 数えても、手の指だけで数えれる人数だ。 その人が出てきたときに、そのかかわりは深く話そう。 昼休み、レドナは屋上に行き、家から持ってきたパンの袋を開けた。 シンプルな、アンパンである。 レドナ本人は、別にどのパンでもよかった。 しかし、レドナの母と簡単に言える存在ではないが、義理の母が甘党であるというのが理由だ。 たまにだが、メロンパンやチョコ云々のパンの時もある。 そのたび、クラスの女子に配ることもしばしあった。 一人、のんびり食べていると、屋上のドアが開いた。 真「よっ、ア~キラ」 香澄「一緒にご飯食べよ?」 いつもの2人だった。 別に、屋上で食べると言ったりはしていない。 ただ友人、いや親友としては何処にいるか大体推測が着くのだろう。 それともう一つ理由がある。 レドナ「ん、あぁいいよ。 今日も、香澄の占いか?」 香澄「まぁ~ね、単純なトランプだけどさ」 すんなり、レドナもOKを出し、尋ねる。 それに、ポケットからトランプケースを出して見せて香澄が答える。 彼女は校内占い的中率No.1の座を持つ。 人の居場所や、落し物の場所等を淡々と当てて見せては、感謝される。 それを商売目的としないのは彼女の良心だろう。 そして、レドナは決意した。 2人には真実を話そうと。 あれだけの強敵が来た、それに現時点でここを守るガーディアンは自分1人。 ラストガーディアンに覚醒したレドナ。 この現象には様々な例外が着くため、エクステンド本部でも動きがあるだろう。 そうなると、学校を辞める可能性も出てくる。 皆に迷惑をかけることもあるかもしれない。 逆に、協力してもらうことも。 それを含めると、今打ち明けたほうがいいのでは、とレドナは考えた。 一度に全部教えるなどという無茶苦茶なことは言わない。 こういう昼休みの時間でも使って、少しずつ教えていこう。 それが、今のベストな選択だとレドナは確信した。 そして、打ち明けた。 レドナ「2人に、話たいことがある・・・・。 ふざけずに、真面目に聞いてほしい」 ――――2年後―――― レドナたちは、神下中学校の3年生となった。 今まで、世界は何も変わらなかった。 たまに、敵の襲撃があった。 しかし、ここ1年は沈黙を続けている現状だ。 それに、真や香澄達は真剣にレドナの告白を聞いた。 驚くこともあったが、それでもレドナを差別するようなことは無かった。 今まで通りの親友。 真「じゃあな、暁~!」 香澄「まったね~」 レドナ「おう、また明日」 下校途中の道で、レドナは2人と別れた。 軽く手を振って、自分の帰宅道へと足を歩ませた。 しかし、その時平和を打ち砕く術が現れた。 足元には赤色の閃光が走る。 周囲が一瞬光りを放ち、ここの世界が、瞬時に戦闘区域と化する。 幸い、住宅街であったが、どうやら相手は戦闘型魔法陣を展開したらしい。 人に危害が加わることは無いというわけだ。 レドナは耳を研ぎ澄まし、敵の接近を察知する。 ???「ふふっ、こっちですよ、レドナ」 レドナは振り向くと、大鎌を持って黒いコートを着た者が襲い掛かってきた。 咄嗟に、レドナは後ろに飛ぶ。 レドナの居た地面に鎌の刃が突き刺さる。 レドナ「ちっ、来い!!シルフィーゼ!!!」 神下中学校の制服が光と化して弾ける。 瞬時に、レドナの心底の具現化、シルフィーゼの黒衣が身に着けられる。 同時に、レドナの右手に漆黒の刃、左手に白銀の刃が握られる。 漆黒の刃の名は"グリュンヒル"攻撃用の両刃の大剣。 白銀の刃の名は"リグティオン"砲撃も可能なサポート役でもある大剣。 どちらも、レドナには欠かせない戦友だ。 その戦友をしっかりと握り締め、相手の姿を確認する。 ???「初めまして、僕はアギト、アギト・ゼベルグ。 よろしく、漆黒の大双剣」 レドナ「アギト・・・まさか、屍の大鎌使い!?」 アギト・ゼベルグ。 彼は名の通る、シュナイガーのソーサラーである。 その名のとおり、大鎌を扱い、何人ものガーディアン、人間を消してきた。 それに、彼らはイクトゥーと呼ばれる集団である。 総勢12人のソーサラーのエリート集団だ。 メンバーは全員黒いコートを着ている。 エクステンド、ガーディアンたちの間でもかなり噂になっている。 アギト「せっかく会えたけど、消えてもらいます!!」 さっと鎌を構えて、レドナに襲い掛かってくる。 わずかな路地の向こうから、黒い塊が飛んでくる。 レドナ「拡散させろ!!リグティオン!!!」 リグティオンの柄についているトリガーを引っ張った。 剣の先端、くぼんだ部分から青色の魔力のビームが発射する。 綺麗な軌道を描き、アギトへと高速で向かっていく。 しかし、アギトは上に飛び上がり、着いて来たビームを鎌で粉砕した。 だが、レドナの読み通りだった。 そのままグリュンヒルを構え、空中に向かって突進する。 かろうじて、鎌で防御するアギト。 一瞬遅れてのガードのため、後ろに飛ばされ怯んだ。 アギト「やりますね・・・レドナ」 レドナ「相手を間違ったな、イクトゥーのアギト」 アギト「でも、まだ終わりじゃありません!!」 一気に、アギトが加速する。 レドナとの距離をおく。 瞬時、左手を広げ、紫色の魔法陣を展開し、魔法を唱える。 アギト「拘束魔法、キャッチワーム!!」 魔法陣から、紫色のワーム状の捕獲用リングが飛び出る。 発動から1秒、レドナも左手を開き、赤色の魔法陣を展開する。 レドナ「打ち砕け!!封鎖魔法、ディスペラード!!」 赤い球体の弾丸が放たれ、ワーム状のリングを巻き込み自爆する。 アギト「今です!リリアム!!」 リリアム「離れな、アギトっ!!」 レドナ「っ!?」 振り向いたレドナの後方。 赤色の5本のロープが襲い掛かってくる。 伏兵として隠れていた、リリアムと呼ばれた女の攻撃だ。 黒いコートを着ていることから彼女もイクトゥーらしい。 レドナ「しまっ―――」 攻撃は、レドナに直撃するはずだった。 しかし、攻撃は弾かれた。 察するに、レドナに対してバリアが何らかの形で張られたのだ。 レドナ(不提唱発動型の防御魔法か・・・・?) リリアム「他のガーディアン!?」 ???「攻撃魔法、フィゴード!!」 声のするほうを見る。 金髪の長い髪の少女がそこにはいた。 その少女の右手に、緑色の魔法陣が展開される。 そこから、直径5cm程度の魔力の結晶体が発射された。 アギト「リリアム!!」 直ぐにアギトが駆けつけ、リリアムに向かってくるそれを鎌で弾き飛ばす。 その瞬間を、レドナは見逃さなかった。 神速の速さで、リリアムの後ろに回りこむ。 レドナ「後ろがガラ空きだぜぇっ!!!」 リリアム「うっ!!きゃぁぁぁぁっ!!!」 思いっきりグリュンヒルを振り上げる。 黒く赤い閃光は、リリアムの背中を切り上げた。 悲痛の叫びを上げる、リリアムをよそに再びレドナは攻撃を仕掛けようとする。 アギト「リリアム、逃げて!ここは僕が!」 レドナ「はぁっ!!」 鎌と、グリュンヒルでの鍔迫り合いがおきる。 両武装の刃がカチカチ音を立て、火花を散らす。 その間に、リリアムは逃げようと必死で転移魔法の魔法陣を発動させた。 金髪の少女が追いかける。 しかし、すぐにリリアムは魔法陣の中に入り、この空間から離脱した。 アギト「リリアムの仇、いつか絶対に僕が討ちます!!」 鎌を大きく一振りして、アギトが言う。 飛ばされて、ようやく鍔迫り合いが終り、レドナは地面に着地した。 レドナが見上げたときには、アギトもリリアムと同じく転移魔法の中へと入っていった。 役目を終えた戦闘区域は、源である魔法陣と共に崩壊していった。 再び、世界の一部となったこの空間。 夏の夕日が昇り、レドナの影が長く路地に映っていた。 ???「あ、あのぉ・・・・」 茫然自失となっていたわけではないが、それでも少しぼんやりしていたレドナに声をかける。 主は、さっきの金髪の少女だ。 レドナ「あ、その、さっきはサンキューな」 声に少し驚きつつも、レドナは礼を言った。 ???「いえいえ、仲間を守るのは当然のことであり、義務ですから~」 笑顔で少女は答える。 どうやら、ガーディアンであることは間違いないようだ。 フィーノ「そういえば、レドナさんには自己紹介しておかないといけませんね。 私はフィーノ、フィーノ・ラライドです、よろしくお願いしますねっ」 レドナ「あぁ、よろしく、フィーノ。 ・・・・んで、フィーノはどうしてここに?」 フィーノ「もちろん、フィオ・テリトリーの守備ですよ~」 彼女が発した言葉、"フィオ・テリトリー"。 別名、黒き悪魔が住むテリトリーといわれている。 まず、テリトリーというのは、エクステンドが決めたガーディアンの行動範囲。 範囲、と言っても、簡単にテリトリーを出ることは出来る。 要するに、ガーディアンの使命は、決められたテリトリーに出る敵を片付けることだ。 テリトリーのガーディアンは最大5人。 そして、ここフィオ・テリトリーも2年前までは5人で守られていた。 しかし、黒いコートの男にレドナ以外殺されてしまった。 それがあってこそ、レドナはラストガーディアンに覚醒することができた。 そして、膨大な力と魔力を得ることも出来たのだ。 日本にいる、ラストガーディアンは指で数えられるほどしかない。 そのため、シュナイガーのソーサラーも、滅多なことが無い限りこれを相手にしない。 数回敵もフィオ・テリトリーを襲撃したが、レドナによってことごとく粉砕された。 その功績を敵が恐れ、エクステンドも親しみを込めて"黒き悪魔が住むテリトリー"と名づけられた。 レドナ「いままで2年間も完全に俺に任されていたテリトリーに配属っつーことは・・・。 やっぱり、イクトゥー云々についてか?」 フィーノ「さすがレドナさん、話が早いです~」 嬉しそうに、少し跳ねながらいう。 フィーノ「実は、イクトゥーに3こものテリトリーを潰されているんです。 そして、敵はここを中心に攻めようとしているのが現状です。 だから、私達がここで受け止めてイクトゥーを討伐してほしいと」 レドナ「そっか・・・。 たしかに、今の敵相手だとソロじゃ辛いな」 フィーノの助けが無ければ、レドナはあの世に逝っていたかもしれない。 むしろ、2人でも少ないかもしれない。 かといって、エクステンドに要請しても人材はこないだろう。 その時、携帯の着信音がなった。 音の発信源はレドナのポケットだ。 フィーノに、ちょっと待っててと言って、レドナは電話にでる。 レドナ「もしもし、御袋?」 香奈枝「あ、暁ちゃん? さっき、電話繋がらなかったけど、どうかしたの?」 声の主は、暁の義理の母である、"鳳覇 香奈枝"であった。 さっき、というのは戦闘をしていた時のことだろう。 戦闘区域では、完全にこの世から隔離されるため、携帯ももちろん繋がらない。 レドナ「ぁ、わりぃ、ちょっと戦闘があってさ」 香奈枝「そう、怪我はない?」 レドナ「あぁ、大丈夫」 無論、香奈枝はレドナがガーディアンであることを知っている。 というより、それを誇りに想っている。 『強い子が家にいてくれて頼もしいわ』が、彼女のレドナの真実に対する第一印象である。 だからあえて、危険に首を突っ込むな等の発言はない。 戦闘があっても驚かないし、逆に冷静に体調を心配する。 香奈枝「うん、ならよかったわ。 もうそろそろ夕飯できるから、早く帰ってきてちょうだいね」 レドナ「ん、了解」 ほっとした香奈枝の声を聞いて、レドナは電話を切る。 フィーノ「お母様ですか?」 レドナ「あぁ、夕飯できるから、はやく帰って来いだってさ」 フィーノ「そうですかぁ~」 ちょっと残念そうにフィーノが言う。 レドナ「ん?どうかしたのか?」 それを察知したレドナが尋ねる。 コクンと頷いて、フィーノは答えた。 フィーノ「そ、そのぉ・・・・まだ家が見つかってなくて・・・・」 いくらガーディアン、救世主であるとはいえ、家までの支給は無論ない。 家を買うものもいれば、野宿で過ごすものもいる。 レドナは、いろいろな事情で香奈枝の家でお世話になっている。 レドナ「要するに泊めろと?」 フィーノ「は、はぃ・・・差し支えなければですが・・・・」 さらにもじもじとフィーノが答える。 一瞬考えて、レドナはそれにこう答えた。 レドナ「正直、差し支えあるけど」 フィーノ「そ、そうですよね・・・はぁ」 レドナ「まだ終ってねーっつーに。 女の子1人神下橋の下に寝かせるわけいかねーし」 神下橋というのは、ここ神下市にある大きな橋である。 この街に住んで、橋と言えば第一にそこが連想される。 数年住んでいるレドナの今の例えがでたことがその証拠だ。 フィーノ「じゃあ、いいんですかぁっ!?」 レドナ「御袋の許可がでたらな」 フィーノ「ありがとうございますっ!! この恩一生忘れません!!」 そういって、思いっきり頭を下げた。 勢いつきすぎて、地面に頭をぶつけそうなほどだった。 とりあえず、レドナはこの選択が間違いでないことを神に祈るのみであった。 To be next chapter ジャンル別一覧
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